怒りと悔しさで燃え上がる選手たち。リードとマキロイが激突する最終日。(舩越園子の2016ライダーカップレポート)
2016年9月29日(木)午後1:19
ライダーカップ2日目の朝。米国チームの胸の中には怒りと悔しさが溢れ返っていた。
前日は午前のフォアサムを4勝0敗と圧勝し、午後のフォアボールでは1勝3敗と差を縮められたものの、初日を「5対3」で終えたのだから、2日目を優勢で迎えた米国側はむしろご機嫌であってもいいはず。
それなのに米国チームの胸の中がなぜ燃え上がっていたか。そのワケは、前日の午後の最終マッチで欧州チームのローリー・マキロイが取ったジェスチャーが脳裏から離れなくなっていたからだ。
パー5の16番でイーグルパットをスルリと沈め、「3&2」でそのマッチを勝ち取ったマキロイは、胸に手をやりながら「どうも、どうも」と観衆に向かってコミカルに2度、お辞儀をして見せたのだが、そのおどけた仕草は米国チームの面々や観衆の目には、まるで小馬鹿にされているように映った。
SNS上ではマキロイを揶揄するツイートや書き込みが広がり、米ゴルフ界は大騒ぎ。そんな騒動から一夜明けた2日目の朝、米国側の怒りは収まるどころか一層激しく燃え上がっていた。
しかし、そのマキロイは初出場ながら淡々と好プレーを続けるトーマス・ピータースとともに午前のフォアサムの第1組で戦い、出だしから好発進して「4&2」で勝利。これで米国側の怒りは、もはや爆発寸前になった。
だが、米国側はブラント・スネデカー&ブルックス・ケプカ組が1勝を挙げたにとどまり、ジミー・ウォーカー&ザック・ジョンソン組はジャスティン・ローズ&クリス・ウッド組に敗北。パトリック・リード&ジョーダン・スピース組はセルヒオ・ガルシア&ラファエル・カブレラ・ベヨ組と引き分けへ。
午前のフォアサムマッチを終えて米国と欧州は「6.5対5.5」。初日の午前に作り出した4ポイントの大差は、初日の午後を終えると2ポイント差になり、2日目の午前を終えたときは1ポイント差へ。
米国側はぎりぎりでリードを保っていたが、着実に差を縮められていることは、着実に負けを重ねていることと同義だ。しかし、負ければ負けるほど必死になり、とんでもない熱さになるのがライダーカップだ。午後のフォアボールで米国側は選手も観衆も理性を失うほど熱く燃え上がった。
一時は4アップまでリードしたマキロイ&ピータース組は相変わらず強く、2人はヘーゼルティンナショナルに詰め寄せた5万人の観衆にとって“最大の敵"と見なされた。前日におどけた仕草を見せた因縁の16番でマキロイが池に打ち込むと、周囲は「USA!USA!」の連呼の嵐。
それでも17番でバーディーパットを捻じ込んだピータースの集中力は見事だった。だが、「3&1」でマッチを勝ち取ったにも関わらず、マキロイとピータースの2人は観衆の野次とマナーに怒り心頭。ピータースは口も利けないほど怒りを募らせていた。
とはいえ、米国チームにしてみれば、その時点でついに「6.5対6.5」と並ばれてしまったのだから、ポイント差がゼロになったその瞬間、米国チームの燃え上がり方は留まるところを知らぬほど激化していった。
14番、15番。決め手のパットを沈めるたびに、頬を真っ赤に紅潮させたリードが激しい雄叫びを上げ、大観衆も狂喜した。
マット・クーチャーとペアのフィル・ミケルソンが17番でバーディーパットを沈め、「2&1」で勝利すると、割れるような拍手と歓声が沸き起こった。
18番でリー・ウエストウッドがショートパットを外し、JB・ホームズ&ライアン・ムーア組の「1アップ」の勝利が決まると、大観衆は小躍りしながら米国側のさらなる1ポイントを喜んだ。
そして、最終マッチを戦うリードが17番でバーディーパットをきっちりカップに寄せた瞬間、「2&1」の勝利が決まり、大観衆の興奮は最高潮へ。
「大観衆の応援が僕に最高のプレーをさせてくれた」
興奮冷めやらぬ様子でそう語ったリードは、この日のヘーゼルティンのヒーローだった。
2日目の午後を終え、米国と欧州は「9.5対6.5」。区切りを迎えるたびに4ポイント差、2ポイント差、1ポイント差と半減していった差を、米国チームはようやく3ポイント差へ広げ、最終日の個人マッチを迎えることになった。
個人マッチの第1組は、2日目に最も熱くなったリードと圧倒的な強さを誇るマキロイの対決になる。両チームとも出だしで流れを掴もうと目論んでいる。
「パトリックはライダーカップで勝利するために作り上げられた選手のようだ」
キャプテンのラブはトップスタートを切るリードに望みを託している。2組目からはスピース、ホームズと続き、12組目のアンカーはライダーカップ5回目の出場となる大ベテランのザック・ジョンソン。この順番米国チームのはキャプテンと副キャプテンたちが考えた「最後の最後まで気を抜かず、何があっても対応できる姿勢」の表明だ。
一方の欧州側はマキロイ以降はステンソン、ピータース、ローズという具合に、この2日間、好調な選手を先へ先へと送り出し、ピータース以外の5人の初出場者やパットが絶不調のウエストウッドを終盤に回して、早い段階で勝利を確定させようという作戦だ。
果たして、両チームの作戦は思惑通りに作動するのだろうか。負ければ負けるほど熱く燃え上がるという意味では、2日目に差を広げられ、アウエイゆえに観衆から冷遇され続けた欧州チームの怒りは増大している。
だが、過去に重ねた敗北に悔しさを募らせながらこのライダーカップを迎えた米国チームの怒りと燃え上がり方は、すでに想像を超えている。
明日の最終日。サミュエル・ライダーの魂が宿る優勝トロフィーを手に入れるのは、米国チームか、欧州チームか??。
文/舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)
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