どちらにも勝ってほしいと願うワケ(舩越園子の現地レポート/2016全英オープン)
2016年6月29日(水)午後6:13
予選2日間は独走態勢だったフィル・ミケルソンと追撃をかけてきたヘンリック・ステンソンが目まぐるしく首位の座を入れ替わった全英オープン3日目。最後にはステンソンが1打リードの単独首位、ミケルソンは単独2位で明日の最終日を迎えることになった。
この日、ミケルソンは自らのショットが本調子ではないことを序盤で悟り、「無理をせずパーを拾う道を模索しながらプレーした。その結果、アンダーパーで回れたのは上出来だった」。スイングの狂いを感じても首位の座から滑り落ちても前向きな考え方ができたのは、彼自身も言っていた通り「すでに全英で勝ったという経験のおかげ」なのだろう。
一方、この日に68をマークし、悲願のメジャー初優勝を達成する絶好のチャンスを手に入れたステンソンは「リベンジ?もちろん、いつだってそのつもりだよ」と意気込んで見せた。
そう、ステンソンが悔しい敗北を喫し、リベンジを心に誓った過去の大会は数知れず。そして多くの人々の印象に残っているのは、ミュアフィールドが舞台となった2013年の全英オープンだ。あのとき43歳でクラレットジャグを抱いたミケルソンの陰で、2位に甘んじ、ひっそりと悔し泣きしていたのがステンソンだった。
「ヘンリックがメジャー初優勝を飾る日を僕たちヨーロッパのファンは心待ちにしている。その昔、ミケルソンのメジャー初優勝をアメリカのファンが待ち望んだのと同じだよ」
そう教えてくれたのは、今週のホテルとロイヤルトゥルーンとの間の送迎シャトルの運転手を務める英国人男性。
なるほど。あの2013年のミュアフィールドでミケルソンが全英初優勝とメジャー5勝目を挙げた姿を傍目に、英国や欧州の人々は「ああ、またしてもステンソンが勝ちそこなった」と落胆していたのだそうだが、それより何より、一番落胆したのはステンソン自身だった。
あの2013年全英の惜敗のみならず、ステンソンの人生には実にたくさんの山谷があった。1999年にプロ転向後、2001年から順調に勝利を重ね、2007年には世界選手権シリーズのマッチプレー選手権、2009年にはプレーヤーズ選手権を制して世界のトッププレーヤーの一人に数えられるようになったところまでは良かった。
だが、その直後から、ドライバーを手にしたときのスイングに原因不明の違和感を覚え始め、2011年には深刻なスランプに陥って世界ランキングは230位まで後退。
ちょうどそのころ、キャディやコーチの交代劇もあった。スポンサー契約を結んでいた金融関係の企業に勧められた財テクのプログラムに多額の投資をして大失敗し、大金を失ったこともあった。「精神的、金銭的ショックとゴルフの不調は無関係」と当時のステンソンは言い張っていたが、ほぼ同時期に起こった数々の“事件"と彼のスランプが無関係とは思えなかった。ウエアが汚れるのを避けるため、コース上でウエアを脱ぎ捨て、下着姿で水中ショットを打って大騒動を起こしたこともあった。
何が起こっても、ひたすら前進を続け、這い上がってきた。今春には右ひざの手術を受けたばかりで、いまなお落ち着かない人生。しかし、ひたすら一生懸命に生きている。
そんなステンソンが悲願のメジャー初優勝を達成する姿をロイヤルトゥルーンで眺めたいと地元英国の人々が願う一方で、米国ファンはミケルソンが46歳で全英2勝目を挙げ、トゥルーンで7人目の米国人優勝者が誕生することを夢見ている。
明日はさながら米欧対決の様相。どちらの勝利を望んでいるかと問われても即答できないほど、どちらにも勝ってほしいと願っている。
文・写真/舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)
全英オープン3日目 見逃しオンデマンド配信中 冒頭1時間無料!
【特設サイト】全英オープンゴルフ選手権
【関連】市原弘大の涙の意味(舩越園子の現地レポート/2016全英オープン)
【見逃し配信】2016全英オープンゴルフ選手権
【スマホ・PC配信】全英オープン速報!特別ニュース番組 LIVE FROM ロイヤルトゥルーンGC
全英オープンゴルフ選手権 放送予定
3日目再放送 7月17日(日) 午前8:00?午後3:00 最終日 7月17日(日) 午後5:00?深夜3:00※最大延長翌午前7:00まで
【放送予定】全英オープンゴルフ選手権
全英オープン3日目 見逃しオンデマンド配信中 冒頭1時間無料!
***ゴルフネットワークプラスの全英オープン配信は、番組放送終了後よりオンデマンド配信いたします。権利上の都合によりLIVE配信はありませんので、ご了承ください。***
写真提供:Getty Images