バルタスロールの魂を知っていますか?(舩越園子の現地レポート/2016全米プロゴルフ選手権)
2016年6月27日(月)午後7:49
米ニュージャージー州のバルタスロール(ローアーコース)が全米プロの舞台になるのは今年で2回目。2005年の前回大会のサンデーアフタヌーンは大雨に見舞われ、大会史上19年ぶりのマンデーフィニッシュになった。
優勝争いの終盤はフィル・ミケルソン、トーマス・ビヨン、スティーブ・エルキントンの三つ巴。最後はビヨーンとエルキントンが72ホール目のバーディーパットに泣き、ミケルソンが1打差の通算4アンダーでメジャー2勝目を挙げた。
あれから11年。全米プロが再びバルタスロールで開催される今年、すでに46歳のミケルソンが絶好調であることに運命めいたものを感じずにはいられない。2週前の全英オープンではヘンリック・ステンソンと激しい一騎打ちを演じたばかり。2位に甘んじたとはいえ、「キャリアで最高のショットを打っていた10年前とほぼ同じように打てている」と自信を膨らませていた。
そういえば、メジャー最小ストローク記録をあと一歩で逃した全英オープン初日。ミケルソンは最後のバーディーパットがカップに沈まなかったのは「呪いのせいだ」と冗談交じりに語り、米メディアから「ゴルフの神様の存在を信じる?」と問われると「イエス。僕は信じる」と真顔で答えた。
そんなミケルソンだからこそ、今年のバルタスロールでも何かしら神がかり的な出来事に遭遇しそうな気がしてならない。なぜならバルタスロールには、こんな逸話、いや実話が隠されているからだ。
バルタスロール(Baltusrol)の名は世界的に知られているが、これがBaltus Roll という人の名前に由来し、その人は1831年に強盗殺人に遭って亡くなったという事実はあまり知られていない。
果樹園を経営していたロール氏が亡くなった後、近郊の山は彼にちなんでバルタス・ロール・マウンテンと名付けられた。それから60数年が経過した1895年、ルイス・ケラーなるニューヨーカーによって、その地に造られたゴルフ場がバルタスロールGCの前身だ。最初は2372ヤードの9ホールだったが、2年後には18ホールへ拡大。そして名匠A・W・ティリングハーストの設計により、バルタスロールが合計36ホールの近代的な姿を世の中に披露したのが1922年のことだった。
そんな経緯を振り返ると、バルタスロールでしばしば熱戦が繰り広げられるのは、この地の“過去"と無関係ではないだろうと思えてくる。
バルタスロールでは過去に全米オープンが合計7回(アッパーコースで3回、ローアーコースで4回)開催された。1967年と1980年にはジャック・ニクラスが見事な勝利を収め、後者は青木功との激しい死闘として語り草になっている。全米プロの前回大会は前述の通り、激しい三つ巴だった。2人の犯人と激しく揉み合い、無念の死を遂げたロール氏の魂が、この地で展開されるゴルフの闘いに“何か"をしているのではないか、今年の全米プロでも何かが起こるのではないかと思えてならない。
とはいえ、ロール氏の死はノンフィクションだが、魂の仕業の話はあくまでもフィクションの世界。前回大会より距離が伸長された7428ヤード、パー70のバルタスロール攻略に求められるものは、フィクションではなく飛距離と正確性。そして最後はパットの勝負になる。
しかし、優勝争いの最後の最後は運も求められる。そのときこそ、「神様を信じる」と言い切る選手にロール氏の魂が力を与えるのではないか。
そんな想像を膨らませながら、今年のバルタスロールを眺めてみてはいかがだろうか?
文・写真/舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)
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全米プロゴルフ選手権 放送予定
初日 7月28日(木) 深夜2:00?翌午前8:00
2日目 7月29日(金) 深夜2:00?翌午前8:00
3日目 7月30日(土)深夜0:00?翌午前8:00※最大延長翌午前9:00まで
最終日 7月31日(日) 深夜0:00?翌午前8:00※最大延長翌午前10:30
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写真提供:Getty Images