「心体・技」で3人が首位に並んだ全英オープン初日/舩越園子の現地レポート
2017年7月21日(金)午前7:11
午前中に激しい降雨の予報が出ていた全英オープン初日。「午前スタートと午後スタートで明暗が分かれる」などと言われていたが、蓋を開けてみれば、雨は早朝のうちに止み、大半の選手は降雨の影響を受けない1日になった。
天気予報が大きく外れたと同様に、誰が活躍するか、開幕前に出されていた誰が上位に浮上するかの予想も、どちらかと言えば外れ気味となり、世界ナンバー1のダスティン・ジョンソンも母国の期待を担うローリー・マキロイも1オーバーと出遅れた。
そんな中、首位に並んだのは5アンダーで回ったジョーダン・スピース、ブルックス・ケプカ、マット・クーチャーの3人だった。
スピースは6月のトラベラーズ選手権を制して今季2勝目を挙げた後、3週間のオフを取り、バケーションでメキシコへ。ゴルフクラブをまったく握らず、のんびり過ごしたことで「心身がとてもリフレッシュされた」。
先週の土曜日にロイヤル・バークデール入りし、キャディのマイケル・グレラー、コーチのキャメロン・マコーミックらと開幕に備えてコースチェックと練習に精を出してきた。
スピースはロイヤル・バークデールをプレーするのは初めてだが、全英オープンを戦うのは23歳にしてすでに5度目。「この5年は僕をベテラン選手にはしなかったけど、いろんなことがわかるようになった」
目まぐるしく変わる天候の下、千変万化のリンクスコースでは、ピンを無理に狙わず、「グリーンの真ん中を目指していくのが最善の道」。
そして、ミスをしてもネガティブに捉えず、いい方へ、いい方へと考えていくのが最善の策であることをスピースは学んだという。「今日はグリーンを2度外したけど、横風の中では距離感を合わせるのがとても難しく、その中で2度しか外さなかったのは上出来だ」
スコアも「初日はレッドナンバーなら上出来」と控えめな目標を設定していた。その中で、5アンダー、ノーボギーで回れたことは、上出来を上回る大満足。そうやって正の連鎖を生み出す術を、スピースはこの5年間の経験を通じて身に付け、それを生かしたことが全英初日の首位発進につながった。
そして、ケプカの全英オープンの迎え方もスピースのそれとよく似ている。6月の全米オープンを制し、メジャー初優勝を遂げた27歳のケプカは、それから4週間のオフを取り、今週は全米オープン以来の試合出場となった。
そんなに長く休んだら試合勘が鈍るのではないか?上がっていた調子が下がってしまうのではないか?そんな危惧の声も上がっていたが、ケプカ自身はそうした声に対し、笑顔で首を横に振った。「感覚はすぐに戻るもの。そこを危惧するよりも、長期のオフで心身がリフレッシュされて結果的に得られるもののほうがずっと大きい。心と体がリチャージされると、いざゴルフクラブを握ったとき、気持ちが高まり、集中力が極端なぐらい高まってくれる」
4週間のオフ明けで臨んでいるこの全英オープン初日には「戦う意欲がみなぎるのを感じた」。それが1イーグル、4バーディー、1ボギーの5アンダーにつながった。
唯一悔やまれるのは、この日、たった1つだけ喫した「16番のボギーが残念。唯一のミスパットだった」。
だが、緊張やプレッシャーで硬化した心身を4週間のオフでほぐしてきたからこそ、ケプカは悔しいボギーを受け入れ、前向きな気持ちで咀嚼することができたのだろう。 続く17番(パー5)は第2打がバンカーに転がり込み、ボールは運悪く砂上に残っていたレーキ跡の溝の中に止まっていた。「キャディからピン3メートル圏内なら上出来とアドバイスされ、そのつもりで打ったらカップに入ってくれてラッキーだった」
いやいや、ケプカの言葉を借りれば、それはラッキーだったと言うよりも、リフレッシュしたおかげで極端に高まった気持ちと集中力の賜物だったと言えるのかもしれない。
それではクーチャーはどんな姿勢とどんなゴルフで初日に首位に立ったのか。39歳のクーチャーは、すでに13度目の全英オープンを迎えており、ロイヤル・バークデールで戦うのは今回が3度目になる。「1998年大会、2008年大会のときと比べると僕は当時よりずっとずっと心身がベター・プレーヤーになっている」
初日のクーチャーは前半で5バーディーを奪い、ボギーは一度も叩かなかった。そして後半はすべてパー。スコアが伸ばせずとも笑顔は絶やさず、忍耐も切らさず。だからこそスコアを落とさず、5アンダーをマークした。
好ラウンドをもたらしたものは何だったのかと問われたとき、首位に並んだ3人が3人とも技術的なことより心身のリフレッシュや向上を語ったところがなんとも興味深い。
リンクスコースを戦う上で求められるものは技術より心と体。ゴルフは「心・技・体」が求められるスポーツではあるが、リンクスゴルフのプライオリティは「心体・技」。
そんなことを思わせる全英オープン初日だった。
文/舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)
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