誰の想いが開花し、実るのか。全英オープン、いよいよ開幕。/舩越園子の現地レポート
2017年7月20日(木)午前10:05
世界のトッププロたちは、それぞれの期待やプレッシャーの下、自分なりの流儀で明日の全英オープン開幕に備えている。
地元・英国で最大の人気を誇っているのはローリー・マキロイだが、彼は全米オープンでは予選落ちを喫し、翌週のトラベラーズ選手権では4日間を戦えたものの17位に終わった。欧州ツアーのアイリッシュ・オープンでは大会ホストでありながら予選落ちし、続くスコティッシュ・オープンでも予選落ちと、このところは成績不振が続いている。
そんな中で迎えようとしているこの全英オープンは、技術的なことより何より、メンタル面の強化が必要だとマキロイは言う。
「バークデールは2005年の全英アマ以来で久しぶりだけど、ここは本当に素晴らしいコースだ。(前週に予選落ちして)早めにバークデール入りしたことで、ここ数日間、とてもいい練習ができた。ゴルフの調子は取り戻しつつある。今、僕に一番必要なのは、自信を取り戻すことだ」
周囲の期待は大きい。自身が抱く期待も、もちろん大きい。だが、期待に応えようとしすぎたり、自身に過度の期待を抱いたり、その重圧に押し潰されてしまうことだけは避けたいのだと彼は言う。「優勝したい。でも優勝しなければいけないわけじゃない。でも、優勝はしたい」この葛藤こそが、今のマキロイの戦いなのだと思う。
一方、世界ナンバー1として勝利を期待されているダスティン・ジョンソンは、どんな想いを抱き、どんな備え方で全英オープン初日を迎えようとしているのか。
今季のジョンソンはメジャー大会で不本意な結果に甘んじてきた。4月のマスターズでは「キャリアで最高の状態」と言い切るほど絶好調だったにも関わらず、開幕前日に階段から転落して腰を強打。結局、初日のスタート直前に泣く泣く欠場を決意した。
腰の回復を待って、以後は「スイング練習に時間を費やしてきた」。そうしなければいけない状況だった。だが、そのぶん小技練習に十分な時間が取れなくなり、それがパットの不調を招いたこと、それが6月の全米オープン予選落ちにつながったことは、ある意味、必然的な結果だったと彼は感じていた。
「全米オープンは(問題だったのは)パットだけだった。そして今は、ショットは明らかに良くなっているし、パットも入り始めている。ようやく僕のゴルフが戻り始めている」
全英オープンに備える上でジョンソンが必要としていたものは、小技の向上、とりわけパットの向上。そしてマキロイ同様、自分らしい自分、自分のゴルフらしいゴルフが戻ってきたという実感。つまり、「I am back.」という自信だった。
マキロイもジョンソンも予選落ちとなった全米オープンで、見事に勝利を収めたブルックス・ケプカは、メジャー初優勝後はオフを取っていた。彼にとってこの全英オープンは、試合そのものへ戻る、復帰するという意味での「I am back.」となる。
そんなケプカに対してジョンソンは、「ブルックスはゆっくり休みを取るに値する活躍をしたから、それでいい。でも僕には祝える事は何一つなかったからね」と冗談めかして言った。
だが、それは半分は冗談でも半分は本気だ。オーガスタを戦わずして去り、エリンヒルズを週末を迎えずして去ってからのジョンソンは、ロイヤル・バークデールを目指し、不眠不休で必死の練習を積んできたと言っても過言ではない。第2子が生まれたばかりだが、家族3人は米国に留まらせ、今回は単身で英国へ乗り込んだ。そんな諸々にジョンソンの死に物狂いの必死さが感じ取れる。
お祭りムード明けのケプカは、全米オープンで彼に猛追して2位になった松山英樹と今週の予選2日間を同組で回る。「ヒデキと回るのがとても楽しみ」
最近の松山は、他選手たちの会見でのやり取りが記されたスクリプト(コメントシート)や彼らに関する記事などにも目を通しているという話を、チーム松山の関係者から聞いたことがある。
英語にも他選手たちの言動にも興味を示し、情報収集にも積極的な松山は、自分に対するケプカの言葉をすでに見聞きしていたのだろう。ケプカと同組で回る明日の初日を控え、松山はこんな言葉を口にした。「(ケプカの)いいプレーが見られると思うので、(僕も)いいプレーで返せたらいい」
母国の期待を背負うマキロイ。世界ナンバー1のプライドを保ちたいジョンソン。全米オープン覇者の意地を見せたいケプカ。そして日本の期待を一身に担う松山。
それぞれが、それぞれの想いを抱き、それぞれの流儀で備えてきた全英オープンは、間もなく開幕。22万5000人の記録的な入場者数が予想される今年のロイヤル・バークデールで、誰の想いが開花し、実るのか。4日間すべての戦いから目が離せない。
文/舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)
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(写真:Getty Images)
全英オープン
<テレビ放送予定>
1日目:7月20日(木)午後2:30~深夜4:00
2日目:7月21日(金)午後2:30~深夜4:00
3日目:7月22日(土)午後5:00~深夜4:00 ※最大延長午前 6:00
4日目:7月23日(日)午後4:00~深夜3:00 ※最大延長午前 7:00
<出演>
解説:佐藤信人(プロゴルファー・JGTO理事)、内藤雄士(ツアープロコーチ)
実況:薬師寺広・土居壮
ゲスト解説:矢野東プロ(2日目)、久保谷健一プロ(3日目)、塚田好宣プロ(4日目)