松山英樹が見せた世界トップランカーの証「最終日に研ぎ澄まされるショットと集中力」
2017年6月19日(月)午後1:43
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松山英樹の猛チャージに沸いた「全米オープンゴルフ選手権」最終日。トップと6打差の14位タイからスタートした松山は8バーディ、2ボギー「66」をマーク。通算12アンダーでメジャー制覇へあと一歩のところまで迫った。
悲願のメジャー優勝は叶わなかったが、海外メジャーの自己最高となる2位フィニッシュ。1980年の全米オープンの青木功と並ぶ日本人メジャー最高位にも並ぶ結果だ。松山英樹が見せた最終日の猛追をゴルフネットワークで解説を務めた佐藤信人プロが振り返る。
4日間を振り返って今年の全米オープンは楽しかったですね。特に最終日は松山選手が怒涛の追い込みをしたので、つい応援的な解説になってしまうくらい興奮しました。
最終日は朝から風が強かったので、スコアが伸びない我慢比べになるかと思ったら途中から風が弱まったことで全米オープンらしからぬスコアを伸ばし合う優勝争いとなりました。優勝したブルックス・ケプカは4日間のフェアウェイキープ率が88%、パーオン率が86%とどちらも80%を超えることは過去の全米オープンを見ても例のないことです。
ビッグスコアに繋がるスタートダッシュ
ケプカにしても松山選手も出だしの1番と2番で連続バーディを奪っています。今大会を振り返ると、比較的バーディが取りやすい出だしの2ホールで流れを掴むとビッグスコアに繋がる傾向にあります。
1番ホールはフェスキューがある左サイドがNGなので右ラフにいくことが多いです。松山選手も初日と3日目は右ラフで、3日目はボギーにしています。一方で2日目と最終日はフェアウェイをキープしてバーディを獲っています。
「1番でバーディを奪って良いスタートダッシュができたことが最終日のプレーに繋がった」と進藤キャディもホールアウト後に話していましたが、3番と4番が難しいので出だしの1番か2番でバーディを取ると、気持ちに余裕が生まれて楽にプレーできます。
実際に1番と2番で連続バーディとした後、3番ではナイスアプローチでパーセーブ。続く4番は12mの下りのスネークラインが入るというボーナス的なバーディで、5番はピンそば0.5mにつけるショットで奪ったタイプの異なるバーディで良い流れに。
「66」のビッグスコアを出した松山選手ですが、2日目と同じようにミドルレンジのパットが入ったことが好スコアの要因でもあります。3日目の解説で藤田寛之プロが「松山選手はパットが入り出すといくらでもスコアが出る」と話していたように、後半は圧巻のバーディラッシュを見せました。
最終日に研ぎ澄まされるショットと集中力
特にサンデーバック9は見ていて鳥肌が立つほど圧巻のプレーでした。決してゾーンに入っているという感じではなく、終盤になるにつれてショットも集中力も研ぎ澄まされていくような想像を超えた異次元のゴルフでした。意外だったのは6番と15番でボギー打っても流れが止まらなかったことです。
普通であればバーディラッシュの後にボギーがくると怒ったりするものですが、松山選手はイライラすることなく、プレーに集中していました。振り返ると、2ボギーあったようには思えないノーボギーのゴルフかなというくらい浮き沈みのないゴルフでした。
テニスでも1回戦や2回戦はフルセットまで縺れて辛くも勝利となっても、セミファイナルでは他を圧倒するプレーを見せるなど、どんなスポーツでも強い選手は尻上がりに調子を上げてきます。調子が良くても悪くても、大詰めになればなるほど集中力が研ぎ澄まされていくのが世界のトップランカーに共通していることです。
昨年のマスターズの5位は3日目を終えて優勝を狙える位置にいたけど、最終日にスコアを崩して優勝争いから脱落。昨年の全米プロでは4位になりましたが優勝争いをした感じではありません。トップとは大きく差がついた位置から最終日にビッグスコアを出した結果でした。
最終日の最終ホールまで優勝の可能性を残してプレーしたのは今回の全米オープンが初めてと言えます。これまでもメジャーで勝つ力は十分にありましたが、今回の優勝争いはメジャー制覇に向けてさらに一歩踏み込んだと思います。
3日目を終えて優勝圏内にいることの重要性
メジャー優勝まであと一歩でしたが初日と3日目が悪くて、この結果ですから4日間良かったら「WGC HSBC選手権」のようにぶっちぎりで優勝していたでしょう。ダスティン・ジョンソンやローリー・マキロイ、ジェイソン・デイにも言えることですがワールドランキング上位者はショットとパットが噛み合えばぶっちぎりで勝つし、今回の松山選手のように噛み合わない日があっても優勝争いできる力を持っています。
全米オープンの結果によって世界ランキングは日本人最高位となる2位になります。ダスティン・ジョンソンの次に松山英樹。デイやマキロイより上にいるんですから、本当にすごいです。もはやメジャーを勝つために必要なことはないと言えるくらい技術もメンタルも充実していますが、一つ言えるとすると「3日目を終えた時点で優勝争いできる位置にいる」ことでしょう。
メジャーで優勝する選手でも初日のスコアが悪いことはありますが、3日目を終えた時点では必ず優勝圏内にいます。今年のザ・プレーヤーズ選手権もそうでしたが、松山選手は最終日の追い込みで順位を上げるケースが多いです。今回の全米オープンは3日目を終えて首位と6打差でしたが、2打差?3打差であればもっと争うことができたでしょう。そういう意味では3日目の「71」が悔やまれますが、来月の全英オープンで優勝する可能性は十分あるので期待したいです。
全米オープンゴルフ選手権
最終日 6/19(月) 午後1:30~午後11:30(LIVE)
【解説】佐藤信人プロ、ツアープロコーチ内藤雄士
【現地ラウンド解説】プロキャディ杉澤伸章