何が起ころうとも、ゴルフ界の今を反映する全米オープン/全米オープンatエリンヒルズ 舩越園子の現地レポート
2017年6月17日(土)午後0:46
今年の全米オープンは、開幕前から「優勝候補は誰なのか?」「エリンヒルズはどんなコースなのか?」「どんなスコアになるのか?」等々、たくさんの「?(クエスチョンマーク)」が浮かんでいた。そして、2日目を終えた今もなお、エリンヒルズには「?」があちらこちらに浮かんでいる。
ダスティン・ジョンソン、ローリー・マキロイ、ジェイソン・デイ。世界ランキングのトップ3が揃いも揃って予選落ちとなったのは、なぜなのか。そう問われても明確な答えなど、もちろんない。その一方で、リーダーボードの上段には無名、小粒、地味と言われる選手がたくさん名を連ねている。
通算7アンダーで首位に並ぶ4人を筆頭に、通算3アンダー19位タイまでの合計23人の中で、メジャー優勝経験があるのはマーティン・カイマーとセルヒオ・ガルシアの2人だけ。つまり、それ以外の21人がメジャー初優勝を目指していることになる。この現象は、果たして何を示しているのか?
世界ランキングの上位に付けている選手たちの安定性が弱いということなのか。それとも、ランキング下位の選手たちの台頭ぶりが目覚ましいということなのか。あるいは、このエリンヒルズに、下剋上的な動きを起こす魔力が潜んでいるのか。その答えは、4日間の戦いの中間地点に過ぎない現段階では、まだ見えない。
だが、そんな混沌とした状況の中にあっても、光る選手は毎日必ずいる。昨日は大会初日の最小スコア記録に並ぶ7アンダー65をマークして単独首位に躍り出たリッキー・ファウラーが一人輝いていた。そして今日の2日目は、初日の「最悪」のゴルフを「最高」に一変させ、7つスコアを伸ばして82位から8位へ急浮上した松山英樹が光り輝いた。
その一方で、ファウラーは2日目は1オーバーのラウンドとなり、首位から5位へ後退。首位に並んだ4人のうちの1人、英国人のポール・ケーシーは、2日目を10番からスタートし、11番でバーディーを奪いながらも、12番ボギー、14番トリプルボギー、15番ボギーと崩れ、戦線離脱かと思われながら、17番からの5連続バーディーで復活。
「いい」と「悪い」は紙一重。そして、高い技術に忍耐と意欲ときっかけが加われば、大挽回も可能となる。そんなゴルフの難しさと面白さが、この2日間の中に、すでに見て取れた。
どんなに混沌としていても、全米オープンが全米オープンであることに変わりはない。そもそも全米オープンは「イーブンパーとの戦い」と表されることが多いが、この2日間を眺めれば、初日はアンダーパーが44人、2日目終了後は42人と“大漁"で、「全米オープンらしくない」と見る向きもある。
だが、エリンヒルズを擁するウィスコンシン州出身のスティーブ・ストリッカーは「それでもやっぱり(still)、これは全米オープンなんだ。それでもやっぱり(still)エリンヒルズは難しいんだ」と静かに語気を強める。その言葉の本当の意味、エリンヒルズの本当の怖さがわかるのは、これから迎える決勝2日間なのかもしれない。
ゴルフヒストリーを振り返れば、メジャータイトルのない選手がメジャー大会で優勝を狙える位置に浮上したとき、有頂天になったり、逆に極度の緊張に見舞われたりという現象は数えきれないほどあった。
そうやって崩れ落ちていった選手たちは、2日目、3日目を終えた時点で優勝を意識しすぎたり、勝ち急いだりのワナに陥った。しかし、今日の2日目の上位者は、メジャー初優勝を狙える位置に付けながらも冷静で淡々としている。若者であっても、メジャー未勝利であっても、すでに百戦錬磨でメンタル面のコントロールにも長けている。そこに以前とは異なる昨今の選手たちの成長が感じられる。
首位で3日目を迎えるケーシーは、これから臨む決勝2日間は「緊張も興奮もあるだろうけど、やるべきことは変わらない。必要なのは忍耐、そして目の前のことに集中すること」と、どっしり構えている。
そして、予選落ちの危機と言える82位からメジャー初優勝を狙える8位へジャンプアップした松山も「いいスコアで回って、いいプレーができた」と喜びを垣間見せはしたが、悪天候の予報が出ている土日は「昨日今日みたいなゴルフでは通用しない。しっかり対応できるよう頑張ります」と、気を引き締めていた。
世界ランキング下位とか、メジャー未勝利とか、無名とか、小粒とか、地味とか、そんな否定的な修飾語がどんどん意味をなさなくなりつつあり、昨今の世界のゴルフ界の勢力図と現状が如実に反映されつつある。エリンヒルズの全米オープンは、そんな全米オープンになりつつある。
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全米オープンゴルフ選手権
2日目 6/17(土) 午後1:00~午後1:00(再放送)
3日目 6/17(土) 午後11:00~翌午前9:00(LIVE)
最終日 6/18(日) 午後11:00~翌午前9:30(LIVE)
【解説】佐藤信人プロ、ツアープロコーチ内藤雄士
【現地ラウンド解説】プロキャディ杉澤伸章
※3日目は最大延長午前11:00まで、最終日は午前11:30まで