作戦成功、息もぴったりの日本。逆転優勝の可能性は、いかに!?(舩越園子の2016ゴルフワールドカップ)
2016年12月6日(火)午後6:33
ワールドカップ3日目。日本は4番でボギーが先行し、米国は1番でボギー発進。2位でスタートした中国は1番でダブルボギー、2番でボギーと大きく躓き、単独首位で出たデンマークも3番でボギーが先行。上位チームが軒並みスコアを落としながらの発進となったことは、決して偶然ではなかったのだと思う。
前回大会(2013年)の覇者であるオーストラリアのアダム・スコットは、2日目を終えたとき、こう言っていた。「このタフなコースでは週末の2日間に何が起こるかは、まだわからない。2日目までの上位チームが週末もそのまま上位にいられる保証は何もない。だから明日は少しでも上位との差を縮めるべく攻めていく」
初日と2日目は様子見も含め、「コンサバティブなゴルフをする」(フランス)、「安全に攻める」(スペイン)という方針だったチームも、3日目からは攻めの一手に転じた。下位のチームは猛追を目指し、上位のチームは少しでも他チームを引き離すことを目指し、きわめてアグレッシブにプレーし始めた。
リスクをとってリワードを求める姿勢で攻めに出た結果、その多くが序盤のボギーやダブルボギーにつながった。それが3日目の出だしの上位チームに共通した現象だった。落としたスコアを早く取り戻そうと、どうしても焦りがちになる。だが、スコアを大きく伸ばすことができた前日のフォーボールと比べ、3日目は初日同様のフォーサムへ戻ったこともあり、出だしはもどかしい展開が続いたチームもあった。
そこで踏みとどまれなかったのが、スペイン、イタリア、スコットランド。逆に、我慢とチームワークで見事に踏みとどまり、さらにスコアを伸ばしたのが通算14アンダーで首位を維持したデンマーク。そして、この日のベストスコア「69」で通算10アンダー、2位に付けた米国、イーブンパーまでスコアを戻して通算9アンダー、3位となった中国。さらには、4バーディー、3ボギーで通算7アンダー、4位タイまで浮上した日本だった。
デンマークのソーレン・ケルドセンとトービョーン・オルセンの2人は、この3日間、終始、弾けるような笑顔を讃えている。「僕たちは今日もいいプレーができたけど、技術面以上にメンタル面がいい状態だからこそ成績が出せているのだと思う。お互いに楽しみながらプレーできているからこそ、アグレッシブに攻めていける」。そう言って、さらに笑顔を輝かせたデンマークの2人だが、彼らの言葉は日本の松山英樹と石川遼にも、そのまま当てはまる。
3日目の日本チームは4番でボギーが先行した後、5番、6番で連続バーディーを奪ったが、7番は松山のパーパットが入らずボギー。9番は入れに行った石川の寄せがカップを大きくオーバーし、それを松山が沈めきれず、ここでもボギー。折り返し後もなかなかスコアを戻せず、日本チームは選手もキャディも険しい表情になった。
転機になったのは13番と14番の連続バーディー。どちらも松山がピンに付けて石川が沈めた。上がり4ホールはスコアこそ動かなかったが、終盤をすべてパーで切り抜けたことが4位の上位入りにつながった。前半を振り返れば、5番と6番の連続バーディーも「松山がピンに付けて石川が沈める」形だった。それは、2人の作戦が成功につながったことの証。初日のフォーサムとは打順を入れ替え、この日は奇数ホールで石川がティショットを打つ作戦へ変更。「ヒデキのアイアンがすごいんで」と松山のアイアンショットに賭ける作戦を石川のほうから提案したという。
フォーマットを変えただけに留まらず、そのフォーマットを生かすべく、2人が息を合わせたことが好結果につながった。13番のティショットで4番アイアンかドライバーかを迷っていた石川に「行っちゃえ」とドライバーを勧めたのは松山だった。「前のホールでバーディーパットを外してたので、気持ち良く行っちゃえと思った」(松山)
「明日(の目標)は1つしかない」(石川)
「ホールアウトしたとき、明日は50台目指そうって決めた」(松山)
首位とは7打差。逆転優勝の可能性は大きいとは言えない。だが、最終日はスコアが大きく動くであろうフォーボール形式。どんでん返しの可能性は決してゼロではない。最終日は3日目以上に全選手、全チームが攻めに攻めていくはずだ。その中で、いかに踏みとどまれるか、いかに盛り返せるか、いかにチームワークを活かせるか。忍耐力と挽回力、そして相棒との呼吸。3つの要素が勝敗を分けることになる。
文/舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)
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