米国チームのキャプテン推薦3名が決定。重視したのは経験と人柄とチームの輪。(舩越園子の2016ライダーカップレポート)
2016年9月20日(火)午後4:06
米ツアーのプレーオフ第3戦、BMW選手権が終了した翌日の朝。
ライダーカップの米国チームを率いるデービス・ラブがキャプテン推薦の3名を発表すると、米国の各種ウエブサイトには、その内容を伝える臨時ニュースが流れた。
ライダーカップの米欧両チームは各々12名で構成される。欧州チームはライダーカップポイントで決まった9名とキャプテンのダレン・クラークが指名した3名の合計12名のメンバーが8月末にすでに確定している。
一方、米国チームのほうはポイントランクに基づく8名は確定済みだが、キャプテン推薦による4名は、BMW選手権終了後にまず3名、ツアー選手権終了後に最後の1名が発表される2段階方式。その最初の3名が発表された途端、全米でも世界でもビッグニュースとして報じられた。
ラブが指名したのは、リッキー・ファウラー、ジェイ・ビ?・ホ?ムズ、マット・クーチャーの3名。元々、ライダーカップポイントランキングでホームズは10位、ファウラーは11位、クーチャーは12位に付けており、3名とも自力のチーム入りをぎりぎりで逃した面々ゆえ、彼らがキャプテンから指名されたことは「順当」という印象が強い。
ただ、その意味では、ランキング9位で自力のチーム入りを最もぎりぎりで逃したババ・ワトソンだけがキャプテン推薦から漏れてしまった形になった。
だが、2週間後に最後の1枠が残っており、そこでワトソンが選ばれるだろうと大方が予想しているせいか、なぜワトソンが選ばれなかったか?」を問う声はほとんど聞こえて来ず、指名された3名が「なぜ選ばれたか」に人々は納得づくで頷いている様子だ。
それでは、指名された3名が「なぜ選ばれたか」を見ていこう。
27歳のファウラーは、過去2回のライダーカップ出場経験があるが、通算戦績は0勝4敗4分と振るわなかった。しかし、だからこそファウラーはチームと自身の雪辱をかけて今年のライダーカップ出場を何よりも願っていた。ポイントランキングで自力のチーム入りを果たすため、リオ五輪から米国へ飛んで帰り、すぐさまウインダム選手権に出て、さらなるポイントを稼ごうと努めた。
「僕の今年の最大のゴールはライダーカップに出ることだ」
ことあるごとに、そう公言していたファウラーは自力出場のラストチャンスだったバークレイズ最終日を首位で迎え、絶好のチャンスに限りなく近づいた。だが、ライダーカップに馳せる想いがあまりにも強かったせいか、最終日は後半に大きく崩れ、大会7位に終わって、自力のチーム入りを果たすことができなかった。
それでもファウラーは、そんな自分に取って代わる形で大会優勝とライダーカップ出場の両方を手に入れたパトリック・リードに「ミネソタで会おうな」と悔しさの中で声をかけた。その潔いスポーツマンシップ、すでにチーム入りが確定しているメンバーたちとの友情、そして何より、ライダーカップの舞台、ミネソタ州のヘーゼルティンナショナルに「絶対に行く」と信じるファウラーの強い信念を、ラブは評価し、彼を指名した。
34歳のホームズもライダーカップに馳せる想いが強すぎて、全米プロからは出場3試合で連続予選落ちを喫した。だが、徐々に自分らしいゴルフを取り戻していったホームズは、プレーオフに入ると調子を上げ始め、BMW選手権では4位に食い込んで、タイムリーな復調ぶりをアピールした。
ホームズは無類のロングヒッター。全長7628ヤードと距離的にタフなヘーゼルティンナショナルでホームズのパワフルなドライビングは米国チームの大きな戦力になる。
そして、もう1つ。「JBは2008年を経験している」とラブは指摘している。
ライダーカップのここ10大会で米国が勝ったのは2回だけ。最後に勝利を挙げたのはポール・エイジンガーがキャプテンを務めた2008年大会だ。
ホームズのライダーカップ出場歴は過去1回しかないのだが、その1回が2008年大会で、ホームズは2勝0敗1分と大健闘してチームの勝利に貢献した。そんな米国勝利の味わいを知っているホームズは今年のチームにとって貴重な存在になる。それが、ラブがホームズを選んだ最大の理由だった。
38歳のクーチャーは今年でライダーカップ4大会連続出場となる。過去の通算成績は4勝5敗2分だが、何と言ってもクーチャーは今夏のリオ五輪で銅メダルを獲得し、五輪におけるゴルフに初めて星条旗を掲げた米国の英雄だ。
クーチャー自身はとても謙虚でフレンドリーな人柄。チームワークを強固にする上でもクーチャーの存在は欠かせない。そしてクーチャー自身はキャプテンのラブを「兄みたい。叔父みたい」と家族のように慕い、ラブが住むジョージア州シーアイランドへ一家揃って引っ越したほどだ。
選手たちのゴルフそのものの調子も重要ではあるけれど、それ以上にチームの輪を最重要視してラブが選んだこの3名の人選に異議を唱える声は聞こえて来ない。
キャプテンが指名する「最後の1人」は2週間後に発表される。最有力候補は、やっぱりワトソン。ライダーカップ出場が決まっていない選手の中でワトソンの世界ランク7位は最高位。リオ五輪に米国代表として出場した4名の中でライダーカップ出場が決まっていないのはワトソンだけだ。ファウラーらとの親交も厚く、人気もあり、飛距離も出る。なにより彼はマスターズ2勝のメジャーチャンプ。大舞台に強いことは実証済みで、ワトソンが指名されれば、これまた「順当」という印象になるだろう。
だが、最後の切り札を選ぶとき、ラブが何を重視するかは彼の胸の中にある。米ツアー史上初の「58」をマークしたジム・フューリックも「最後の1人」の候補だ。意表を突いた人選となれば、若手のジャスティン・トーマス、地道に実力を培っているケビン・キズナー、ケビン・ナらも候補に挙がる。
その「ラストワン」が伝えられたとき、ゴルフ界には間違いなく、再び臨時ニュースが流れるはずだ。
文/舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)
【関連】2016ライダーカップ特設サイト
【関連】ライダーカップに寄せる欧米人の熱い想い(舩越園子の2016ライダーカップレポート)
【LIVE&見逃し配信】ライダーカップ
ライダーカップ 放送予定
開会式 9月30日(金) 午前6:00?7:00 1日目 9月30日(金) 午後9:30?翌午前8:00 2日目 10月01日(土) 午後9:30?翌午前8:00 最終日 10月02日(日) 深夜1:00?翌午前7:30 ※最大延長午前10:00まで
【放送予定】2016ライダーカップ
【LIVE&見逃し配信】ライダーカップ
写真提供:Getty Images