ライダーカップに寄せる欧米人の熱い想い(舩越園子の2016ライダーカップレポート)
2016年9月8日(木)午後1:06
国と大陸の名誉をかけて競い合う2年に1度の米欧対抗戦、ライダーカップが9月30日から10月2日の3日間、米国ミネソタ州のヘイゼルティンナショナルGCを舞台に開催される。
元々、ライダーカップは米国と英国の対抗戦として1927年から始まった大会だが、1973年からはアイルランドが加わって英国連合となり、1979年からは欧州全域へと拡大された。
過去の戦績は通算では米国が25勝13敗2引き分けと圧勝しているが、米国と欧州の対抗戦に変わってからは米国7勝、欧州10勝、引き分けが1回と欧州優勢に変わり、ここ10大会は米国2勝、欧州8勝で欧州優勢の流れが強まりつつある。
両チームは各々12名のメンバーで構成され、2日間はフォーボールとフォーサムのマッチ、3日目は個人マッチで競われる。12名のメンバーの選出方法は、昨今は各々のチームが独自の方法を採用している。
米国チームのメンバーはライダーカップポイントに基づく8名が米ツアーのプレーオフ第1戦、バークレーズ終了後にすでに確定。残る4名はデービス・ラブによるキャプテン推薦で決まるのだが、そのキャプテン推薦は2段階方式。プレーオフ第3戦のBMW選手権終了後(9月11日)にまず3名が指名され、最終戦のツアー選手権終了後(9月25日)に最後の1名が指名される。
一方、欧州チームのメンバーは、まず9名が2種類のポイントに基づいて8月28日までに決まり、ダレン・クラークによるキャプテン推薦3名も同日に発表されて、すでに12名全員が確定している。
チームの輪を重んじる欧州チーム
欧州チームの顔ぶれは、なかなか多彩だ。今年のマスターズ覇者のダニー・ウィレット、全英オープン覇者のヘンリク・ステンソン、リオ五輪の金メダリスト、ジャスティン・ローズ、それにローリー・マキロイやセルヒオ・ガルシアといったスター選手たち。彼らは十分なライダーカップポイントを稼ぎ、自力でチーム入りを果たした9名だ。
そして、キャプテンのクラークが選んだのは英国のリー・ウエストウッド、ドイツのマーティン・カイマー、そしてベルギーの新鋭、24歳のトーマス・ピータースの3名だが、この人選が大きな論議を巻き起こした。
クラークとウエストウッドは旧知の仲。ピータースとはメイド・イン・デンマークという大会で共に回り、「この若者はビッグスターになる」とクラークは直感したという。だから彼らを指名したと聞いて、「クラークの主観が入りすぎた人選だ」と批判の声も上がったが、キャプテンが決めるキャプテン推薦なのだから主観が入ること自体は、ある意味、当然であろう。
「なぜ、クラークはその3人を選んだか?」より、もっと取り沙汰されたのは「なぜ、クラークはラッセル・ノックスを選ばなかったのか?」ということだった。
ノックスは今季の米ツアーで2勝を挙げ、キャプテン推薦当時の世界ランキングは20位(キャプテン推薦当時)と今季絶好調の選手。本人も周囲もノックスが指名されると信じていた。だが「ライダーカップは単なるゴルフの戦い以上の戦いだ」と言うクラークは、好調なノックスの戦力より、欧州人としてのチームの輪を優先した。
ノックスはスコットランド人だが、大学もプロ転向も下積み時代も主戦場も、すべてが米国。2012年に米ツアーデビューし、今季序盤戦のHSBC選手権で初優勝。今夏にはトラベラーズ選手権も制して2勝目も達成した。
だが、ライダーカップに出るためには欧州ツアーのメンバー登録が必要であると知り、慌てて欧州ツアーのメンバー登録を行なったのはHSBC選手権で優勝したあとのこと。それからライダーカップポイントを稼ぎ始めたが、いくら好調でも今季1年足らずで稼いだポイントだけでは上位9名には入れず、だからノックスはキャプテン推薦で選ばれることを祈るように待っていた。
しかし、米国に拠点を置いてきたノックスは欧州選手の大半と会ったことも話したこともないそうで、欧州人でありながら“アメリカン"なノックスをキャプテンのクラークは選ばなかったというわけだ。
「スコットランド人としてライダーカップに出たかった。選ばれなかったのはとても残念。でも僕が指名されていたらチームの輪は乱れていたかもしれない」
ノックスはキャプテンとしてのクラークの決断に敬意を表し、自分の気持ちを切り替えるために、スマホの待ち受け画面をライダーカップの写真から米ツアーのフェデックスカップの写真に変えたのだそうだ。