バルタスロールを一番上手く攻略できそうな人(舩越園子の現地レポート/2016全米プロゴルフ選手権)
2016年8月30日(火)午後5:59
いよいよ明日から全米プロが開幕する。その舞台となるバルタスロール(ローアーコース)は7428ヤードのパー70。この数字だけを見ても距離的にタフであることが想像できると思うが、「長い」という以外にも、いくつか特徴がある。
前半はパー5が1つもなく、パー3が2つのパー34。パー4がいくつも続くため、やや単調な感がある。その流れはパー36の後半も16番まで続く。だが、上がり2ホールはパー5が2つというタフな締め括り。それが、このコースの最大の特徴と言っていい。
17番のパー5は649ヤードと、とんでもない長さゆえ、2オンを狙うのは難しい。バルタスロールで全米プロが前回開催された2005年大会では17番でイーグルが出たのは4日間、全選手の中でケニー・ペリーの1つだけ。しかも、そのイーグルは80ヤード手前からのチップインだった。1993年の全米オープンの際は4日間を通じてイーグルがゼロ。17番は3打目勝負のバーディー狙いが精一杯というのが大方の見方になる。
18番のパー5は554ヤードで、こちらは大半の選手が2オンを狙える距離。しかし、フェアウエイ左サイドの池がやや脅威になる。そして、猛暑の中で育ちすぎるほど育っているラフの密集度と深さは、18ホールすべてにおいて大いなる脅威になる。
距離が長いから、ロングヒッターが断然有利。ラフが難敵ゆえ、高い正確性が求められる。そんなバルタスロールで開幕前に優勝候補の筆頭と見られているのは、やっぱりこの人、ダスティン・ジョンソンだ。
難コースのオークモントで全米オープンを制したジョンソンは、ブリヂストン招待も制して出場2試合連続優勝を達成して世界ランキングは2位に上昇した。さらに全英オープンでは9位、先週のカナディアンオープンでは2位という具合で、全米オープン優勝以降、トップ10を外したことはない。実を言えば、この流れは5月から続いており、メモリアル・トーナメントでは3位、フェデックス・セントジュードクラシックでは5位、そして全米オープン優勝と続いていった。
「とてもいい感じ。とても自信に溢れている」。ジョンソンが自らそう言い誇るのも頷ける。
比類稀なるロングヒッター。そのパワーに正確性が備わったからこそ、昨今のジョンソンは強さを増している。「僕のドライバーショットがフェアウエイを捉え続けている限り、僕を倒すのは大変だよ」
そんなジョンソンにとってバルタスロールの17番と18番はどんなパー5になるのか。
「今はフェアウエイが雨で柔らかくなりすぎている。ナイスドライブしても295ヤードぐらい残った。でもフェアウエイが乾いてくれば状況は変わる。それにチップイン・イーグル狙いだって考えられる。18番は誰にとっても2オンが狙えるパー5だけどね」
17番でもイーグルを取る可能性を、たとえわずかでも感じているのは、おそらくジョンソンだけだろう。
その一方で、昔からジョンソンは「ショートゲームが一番得意」と言っていた。ある意味、ウエッジは感性任せに近かった。だが、今はそこにも変化が起こりつつある。「米ツアーにデビューして以来、初めてウエッジの練習を積んでいる」
ロングゲーム、ショートゲーム、そのすべてにおいて、生来の才能に工夫と努力をプラスして、さらなる磨きをかけている。そして、メンタル面も自ずと向上している。「メジャーで初優勝したら、メジャー2勝目が、すごく欲しくなっている」
成功体験は選手を貪欲にする。しかし、ジョンソンはこうも言う。
「今週が終わったとき、リーダーボードの最上段に居れば、世界一になる。でも、それは結果的にもたらされるもの。そこを目指すのではなく、ベストを尽くしたい」
そんなジョンソン以上にバルタスロールをうまく攻略できそうな選手は、今のところ発見できていない。
文・写真/舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)
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全米プロゴルフ選手権 放送予定
初日 7月28日(木) 深夜2:00?翌午前8:00
2日目 7月29日(金) 深夜2:00?翌午前8:00
3日目 7月30日(土)深夜0:00?翌午前8:00※最大延長翌午前9:00まで
最終日 7月31日(日) 深夜0:00?翌午前8:00※最大延長翌午前10:30
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写真提供:Getty Images